October 19, 2012

ホームカミングディ@東京大学、で対談します

明日10月20日に、東京大学の第11回ホームカミングデイが開催されます。ホームカミングデイとはその名の通り、東京大学の卒業生が母校(ホーム)に戻り、東京大学の現状を深く知ることで母校、または同窓生同士の交流を深めてもらうために企画されているイベントです。その一部である特別フォーラム「グローバル化する世界で、学ぶ、働く、生きる」は、一般の方にもご参加いただけます。

フォーラムは対談形式で、わたくしと、東大の柏キャンパスにある数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)初代機構長で物理学者として名高い村山斉さんが語り合います。こちらとは逆に(というべきか、同じように)、村山さんは長くアメリカで働き、現在カリフォルニア大学バークレー校(キャンベルの母校!)の物理学科教授でもおられます。ご専門は素粒子物理学。どんな話が聞けるか、我ながらワクワクしています。 当日の入場は先着順となっておりますので、詳しくはイベントホームページをご確認の上、早めにお出かけください!
http://www.alumni.u-tokyo.ac.jp/hcd/

東京大学第11回ホームカミングデイ
特別フォーラム「グローバル化する世界で学ぶ、働く、生きる

会場:東京大学 安田講堂
日時:2012年10月20日(土) 12:50~14:00

October 18, 2012

デジタル・ヒューマニティーズ

デジタル技術と人文科学が合体して片方のやり方だけで見分けがつかないような社会的、政治的、文化的なパターンをあぶり出し、分析することを目標とするDigital Humanities。ここ数年間、アメリカ各地で大型プロジェクトが立ち上がり、成果も出、学会も作られ、大学の垣根を飛び越えて熱っぽく語れられるようになってきています。もとは所詮水と油、an alliance of geeks and poets(オタクと詩人の寄り合い所帯)とおちょくられ、前向きな報道もあれば(http://www.nytimes.com/2010/11/17/arts/17digital.html?pagewanted=all&_r=0) 
厳しい評論の矛先から関心の高さだけは本物と分かるのです(http://opinionator.blogs.nytimes.com/2012/01/23/mind-your-ps-and-bs-the-digital-humanities-and-interpretation/)。

歴史家の若尾政希さんが近著でいわれるように、人文科学研究は「人と史料とのかけがえのない出会い、足で稼ぐフィールドワーク」が基礎にあり、研究者は探偵小説の「探偵」みたくこつこつと「謎を苦労しながら解くところに醍醐味がある」に違いありません(『近世の政治思想論―「太平評判秘伝理尽鈔と安藤昌益―』、校倉書房)。人の心を動かす優れた研究は、生の資料に直面したとき、絵でも書物でも一枚の古いハガキでも実物と出会ったとき、睨めっこしている内に芽をのぞかせます。探偵の「勘」はモニターから身につかないのです。

電子リテラシーが中の下と自己評価が低く進展しないわたくしでありますが、今年度、日本大学文理学部が総力をあげて取り組んでいる大型プロジェクトの外部評価委員に任命されました(「文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」東アジアにおける都市形成プロセスの統合的把握とそのデジタル化をめぐる研究)。16日にその委員会が開かれ、日本独自のdigital humanitiesへのアプローチを間近に見ることができました。大変勉強になりました。

研究はいくつかの班に分かれてそれぞれ鋭意成果のまとめに入っていました。当日、わたくしの目を引いたのは日本語日本文学班による「江戸・東京Web GIS」。近世・近代文学と日本語の専門家と、コンピュータサインスの専門家が共同研究を行い、GIS(geographic information system)技術を駆使して江戸・東京の多層的な文化空間をマッピングして仕立てた電子地図です。日大が所蔵する文字資料と映像資料(『江戸名所図会』、山東京伝作黄表紙、鶴屋南北作歌舞伎台本、小林清親版画、銀座写真コレクション)と秋葉原の言語景観調査から膨大な地名情報を取りだし、現在の東京の地図に落とし込んでいます。首都のあちらこちらに散らばるピンをクリックすると、その地点に対応する資料なり調査結果が立ち現れ、これを個別に検討したり、楽しんだりすることができます。また各時代なりジャンルごとにピンの色を変えることで、ピンの集中具合、流れ、たとえば江戸の黄表紙ならどういったエリアで物語がいちばんよく展開していたのか、その例外はどこか、などなど瞬時に「感覚」として江戸の文化空間がとらえられます。同時に、わたくしたちが知っている東京とどうつながって、どう断絶しているかも考えさせられます。これから充実させていくと言っておられました。ゆくゆくdigital humanitiesが目指す大量で良質のデータからのみ導かれるまったく新しい歴史認識、新発見が大いに期待されます。

以上、理屈は抜きにして、日大版「スマホで持ち歩く江戸・東京」を使ってみてはどうでしょうか。公開中のGISはスマホに対応しており、可愛らしいアイコンを出しておけばどこでもそこが江戸になり、明治期銀座の小学生といっしょに微笑んでいる自分に気づくと思います。

日本大学文理学部 江戸・東京Web GIS
http://www.chs.nihon-u.ac.jp/jp_dpt/nichigo-nichibun/web-edo-tokyo/

October 17, 2012

頭文字だけの白いお墓

一昨日書いたように、鎌倉には夥しい岩とやぐらがありますが、今日は石つながりということで先週アメリカのボストンで見つけた小さな石を1個紹介しましょう。

場所はケンブリッジにあるMount Auburn Cemeteryという、ボストン上流社会の家々が墓所をかまえる霊園の一角です。頭文字しか記されていないので分かりづらいですが、ここに眠るのは19世紀末に来日した医師で日本美術コレクターのウィリアム・スタージス・ビゲロー(William Sturgis Bigelow)です。フェノロサや岡倉天心らとともに日本中を歩き回り、40,000点以上の日本美術品を買い上げ、持ち帰ると建って間もないボストン美術館にその全てを寄贈した人物です。日本で仏教に帰依したビゲローは、亡くなると荼毘に付され、遺骨をここと大津市三井寺に分骨させました。

わたくしは、数年前から研究仲間といっしょにボストン美術館にある江戸時代の絵本を調査してきました。今回が最終回。我々が見ることのできた6,000タイトル以上ある絵本のかなりの部分を、このビゲローが見いだし、代々の学芸員が大切に保管してこられた文化財です。最後にお墓参りができて、嬉しかったです。

写真を見て分かるように、わたくしのラペルにはピンマイクがついています。調査の模様、ビゲローの輪郭、そして江戸絵本の素晴らしさをテレビ番組Booked for Japan で伝えようと、この日はカメラクルーといっしょに霊園を回りました。お墓から中継。どんな顔をして語ればいいのか朝から緊張しまくっていましたが、小さな墓石が見つかった瞬間に気持ちがやわらぎ、言葉が自然に流れていきました。放送日が決まったら、お知らせします(NHK-WORLD海外向け放送、キャンベル司会。ただしウェブサイトから自由に視聴できます。http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/tv/bookedforjapan/index.html)

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October 16, 2012

誤報が見せた真実

夕べ行われた森口尚史東京大学附属病院特任研究員の会見を今朝のテレビで見ながら、 こう思いました。

①日本も欧米も、学術雑誌の投稿審査システムが時代に合わず、機能しなくなっていること、

②日本の大学では近年、プロジェクト単位に期限付きのかたちで「特任研究委員」に頼って大量に雇用することで、専任という安定したポジションに移行できず、与えられた課題だけを延々黙々とこなす事実上のアンダークラスを作ろうとしていること、

③日本の大手メディアが、基本的な事実確認すら行わず肩書き(それもあやふやな)だけを信じて報道するのは、おそらく、日常茶飯事

であることを実感しました。

とくに①は研究者の生命線である学術論文そのものの信憑性をゆるがし、②はこの国の科学技術を担うべき若い世代から研究の手応えや充足感、つまりやる気を奪ってしまう結果をすでにもたらしている模様が見えてきたということ、言いかえると森口氏1人の問題ではない、ということなのです。

October 15, 2012

記念すべき10月15日

遅ればせながら本日をもってサイト開きとします!みなさま、どうぞよろしくお願いします。まずは感謝のことばから。

システム設計はフリーランスのWebクリエイター・岩切貴子さんが請け負ってくださいました。岩切さんは説明力にすぐれています。こうすればこうなると、口さがないわたくしでも黙って聞いているだけでサイトがほぼ出来上がってしまうような、凄腕です。ソフトにして頼もしい方です。

ヴィジュアルデザインは畏友Noritaka Tatehanaことシューデザイナー舘鼻則孝さんが担当。
ガガさんがはく、あのかかとのないハイヒールを創案した彼のことですから、2次元でどんな不可思議な世界をぶち上げるかぶるぶる震えていたところ……番傘が来た!なるほど、自力ではおよそ選ばない純「和装」アイテム、きっとわたくしのことを「穏やかな人」と思っておられるでしょうね。ポップに変身させたところが心憎いというか、恰好いいです。ちなみにブログとラジオのバナーも秀逸。優美なる微生物たちが踊っている色の祝祭、みたいな感じで気に入ってます。http://noritakatatehana.com

まずは上記お2人に、心から感謝です。ほんとうに、ありがとうございました。

ちなみに記念すべきこの日をわたくしがどう過ごしたかと言うと、鎌倉まで行って、ひたすら歩いてきました。山を削り、道を開いた中世の武将たちの目線が少しだけ近くに感じられる体験でした。
ひたすら切り通しを探しては歩き、やぐらと言われる岩盤をくり抜いて作った墓所を覗く小旅行。
岩肌のあちらこちらに大きな四角が切ってあって、それらが「向こう」への通路という意味では道路も墓も同じフィーリングだなと、感動しました。最後に由比ヶ浜に出て夕陽をあがみ、帰京。

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