4月13日(木)朝日新聞朝刊2面「ひと」欄で紹介されました。全文をご紹介します。
ロバート キャンベルさん 国文学研究資料館長に就任した。
言葉の四隅に意味がある――。幾重にも意味を帯びる日本語を、そう例える。たとえば「絆」は、自由を妨げる手かせ足かせを意味する「絆(ほだ)し」とも読ませ、心の機微を映し出す。
日本文化をいとおしみ、40年余り。この春、古巣でもある大学共同利用機関「国文学研究資料館」(東京・立川)の第7代館長に、外国人として初めて就いた。東京大大学院教授からの転身である。
米ニューヨーク出身。「ガヤガヤと移民のルーツが交じりあう」下町で育ち、異文化の実相をつかむ力が身についた。15歳の頃、日本の映画や建築と出会った。奥行きの深さに魅了され、江戸から明治の文学を学ぶ。32年前、九州大研究生となり、以来、日本で暮らしてテレビでもおなじみだ。
日本に関する世界中の資料を集める資料館には、画像データだけで20万点。崩し字、漢文、候文とまちまちで、しかも大半が活字になっていない。「でも、それらは宝の山なのです」。江戸期の飢饉(ききん)で上がる米価を見て、やりくりでしのぐ人々の姿が目に浮かび、胸をつかれたこともあった。
在任中に画像を倍以上に増やし、データベースとして一般にも広める方針だ。「資料は千年以上の精神文化を伝える知恵の養分。生きづらいと感じている人のヒントにもなる。英語圏で育った感覚をいかし、海外にも伝えたい」
(文・木元健二 写真・越田省吾)
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