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ROBERT CAMPBELL
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October 18, 2012

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デジタル・ヒューマニティーズ

デジタル技術と人文科学が合体して片方のやり方だけで見分けがつかないような社会的、政治的、文化的なパターンをあぶり出し、分析することを目標とするDigital Humanities。ここ数年間、アメリカ各地で大型プロジェクトが立ち上がり、成果も出、学会も作られ、大学の垣根を飛び越えて熱っぽく語れられるようになってきています。もとは所詮水と油、an alliance of geeks and poets(オタクと詩人の寄り合い所帯)とおちょくられ、前向きな報道もあれば(http://www.nytimes.com/2010/11/17/arts/17digital.html?pagewanted=all&_r=0) 
厳しい評論の矛先から関心の高さだけは本物と分かるのです(http://opinionator.blogs.nytimes.com/2012/01/23/mind-your-ps-and-bs-the-digital-humanities-and-interpretation/)。

歴史家の若尾政希さんが近著でいわれるように、人文科学研究は「人と史料とのかけがえのない出会い、足で稼ぐフィールドワーク」が基礎にあり、研究者は探偵小説の「探偵」みたくこつこつと「謎を苦労しながら解くところに醍醐味がある」に違いありません(『近世の政治思想論―「太平評判秘伝理尽鈔と安藤昌益―』、校倉書房)。人の心を動かす優れた研究は、生の資料に直面したとき、絵でも書物でも一枚の古いハガキでも実物と出会ったとき、睨めっこしている内に芽をのぞかせます。探偵の「勘」はモニターから身につかないのです。

電子リテラシーが中の下と自己評価が低く進展しないわたくしでありますが、今年度、日本大学文理学部が総力をあげて取り組んでいる大型プロジェクトの外部評価委員に任命されました(「文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」東アジアにおける都市形成プロセスの統合的把握とそのデジタル化をめぐる研究)。16日にその委員会が開かれ、日本独自のdigital humanitiesへのアプローチを間近に見ることができました。大変勉強になりました。

研究はいくつかの班に分かれてそれぞれ鋭意成果のまとめに入っていました。当日、わたくしの目を引いたのは日本語日本文学班による「江戸・東京Web GIS」。近世・近代文学と日本語の専門家と、コンピュータサインスの専門家が共同研究を行い、GIS(geographic information system)技術を駆使して江戸・東京の多層的な文化空間をマッピングして仕立てた電子地図です。日大が所蔵する文字資料と映像資料(『江戸名所図会』、山東京伝作黄表紙、鶴屋南北作歌舞伎台本、小林清親版画、銀座写真コレクション)と秋葉原の言語景観調査から膨大な地名情報を取りだし、現在の東京の地図に落とし込んでいます。首都のあちらこちらに散らばるピンをクリックすると、その地点に対応する資料なり調査結果が立ち現れ、これを個別に検討したり、楽しんだりすることができます。また各時代なりジャンルごとにピンの色を変えることで、ピンの集中具合、流れ、たとえば江戸の黄表紙ならどういったエリアで物語がいちばんよく展開していたのか、その例外はどこか、などなど瞬時に「感覚」として江戸の文化空間がとらえられます。同時に、わたくしたちが知っている東京とどうつながって、どう断絶しているかも考えさせられます。これから充実させていくと言っておられました。ゆくゆくdigital humanitiesが目指す大量で良質のデータからのみ導かれるまったく新しい歴史認識、新発見が大いに期待されます。

以上、理屈は抜きにして、日大版「スマホで持ち歩く江戸・東京」を使ってみてはどうでしょうか。公開中のGISはスマホに対応しており、可愛らしいアイコンを出しておけばどこでもそこが江戸になり、明治期銀座の小学生といっしょに微笑んでいる自分に気づくと思います。

日本大学文理学部 江戸・東京Web GIS
http://www.chs.nihon-u.ac.jp/jp_dpt/nichigo-nichibun/web-edo-tokyo/