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March 6, 2017

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これぞ暁斎!ゴールドマン・コレクション展 「祈る女と鴉」作品評

Bunkamuraで開催中の「これぞ暁斎!ゴールドマン・コレクション展」から、展示作品である「祈る女と鴉」について作品評を寄稿しました。今日の「東京新聞」夕刊から。

全文をここに紹介します。

   

 鴉に透ける暁斎の影

 謎めいた風景に想像が膨らむ。女はなぜ祈るのか。17103800_1442809312410085_26697156829086216_n.jpg

 日が暮れなずむ座敷の縁側。遊女は風呂上がり、汗が引くのを待つ間にうつむき加減で一点を見つめている。それをぐっと前景から拡大させた格好で鴉(からす)が眺める。忙しい夜の、支度に入る前の一コマである。

 髪を江戸初期にはやった唐輪髷(からわまげ)に結い、紫陽花(あじさい)模様の長襦袢(ながじゅばん)をぞろりと身に纏(まと)った遊女は、腰の辺りに紅白の紐(ひも)を垂らしている。庭に可憐(かれん)な花を付けた合歓木(ねむのき)が植えてある。葉っぱは開いている。しかし絵師は、薄墨で夜気を描き、簾(すだれ)の衝立(ついたて)の間から部屋に滑り込ませるのを忘れていない。昼と夜が交わる時刻と見受ける。

 水をたっぷり張った角盥(つのだらい)が後ろにある。角盥は、七夕の夜に縁側に出して、牽牛(けんぎゅう)と織女の星を水に映してその光で針穴に糸を通そうとするが、通れば「吉」となる。合歓木も紅白の紐もともに乞巧奠(きっこうでん)、つまり七夕の祭事にまつわるものばかりである。

 さて遊女は芸の上達を祈っているとして、遊女を私たちに近い場所から見守る鵲(かささぎ)ならぬ、鴉は何者か。私には他ではない、鴉の絵で一世を風靡(ふうび)し、画道への精進を誓った画鬼・河鍋暁斎その人の影が透けて見える。