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September 11, 2016

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社会の中で、自然に/『天理時報』9月11日付「キャンベル教授の日本再発見」より

 過日、ロンドンの大英博物館を訪れたことを書いたが、大英博物館はとりわけ古い市街地にあって、ホテルも近かったので滞在中は朝夕、博物館の周りを散歩するのが楽しみになっていた。
 たとえば、キングス・クロス駅のほど近くには「コーラムズ・フィールド」という場所がある。古い鉄柵に囲まれた、緑豊かな公園である。


 中では親子と見える人たちが遊んでいる。入り口の看板を見ると、「子供と、子供が同伴する大人の立ち入りのみを許す」とある。子供の入場制限を設ける公共施設が多い世の中、しばらく看板の意味が理解できずに立ち止まっていた。
 近くにいた職員に聞くと、この緑地の母体は「公園」ではなく、昔から民間の有志が管理するいわば児童福祉の非営利団体である、とのこと。18世紀末の産業革命で、恵まれない子供たちが過酷な労働を強いられ、遊ぶ場所もなくなったので、せめてここは子供本位でいこう、という精神で作られたそうだ。
「子供を伴わない大人は入れない」と思うと、不公平にも聞こえるが、経緯が分かると逆に嬉しくなる。
 民間主導で、出来る人から少しずつ関わっていくというシステムは、18世紀から英国社会にも根づいていたわけである。  

   

IMG_1228.jpg  日本語で「恵まれない」と言うと、少々湿っぽく聞こえるが、社会に存在するハードルに向かって頑張っている人たち「challenged people」と言うほうが、前向きなニュアンスがあるように思う。いまでもロンドンには、そうした非営利の支援団体やお店がとても多い。ある店では、店舗を職業訓練の場として"challenged people"に提供していることを出口のほうにチラリと、けれども強い意志を持って、表明していた。

 支援を必要とする人たちと、支援しようとする人々が、自然な形で共に社会の中にあって、共に関わり合いながら暮らしている。リオデジャネイロではパラリンピックが開幕するが、ロンドンではそんな印象を持った。

 その近くには、ポット入りの苗木を売る園芸店があった。シャクヤクやテッセン、パプリカなど、いろいろな植物の苗が、明るい店内で可愛く小さな顔を並べていた。
 お昼ごろに通りかかったのだが、店内は多くの人でかなりにぎわっている様子。それも、スーツを着たビジネスマンやOLがほとんどである。「苗をどうするの?」と尋ねてみると、皆オフィスに持って帰り、デスクに飾って育てるのだそう。東京ではあまり見かけないな、という印象がここでも浮かんだ。

(『天理時報』9月11日号掲載)